注目の投稿

注意

 本ブログでは生物の種名などを記載していますが、情報は間違っている可能性があります。 素人がやっているものです。鵜呑みにしないようご注意ください。

2022年6月12日日曜日

"A Critical Reassessment of the Evolution of Lichenization in Fungi” について(その2)

 

R. Lücking and M. P. Nelsen, Ediacarans, Protolichens, and Lichen-Derived Penicillium: A Critical Reassessment of the Evolution of Lichenization in Fungi
Transform. Paleobotany 2018, 551590

を要約。疑問点なども最後にメモした。

 

化石資料の再検討と年代

 

Lichen である(lichen かもしれない)と報告されている化石について再検討した。Lichen かどうか、“confirmed”, “ambiguous”, “rejected” に分ける。 (lichen かどうかの基準は下記*注1を参照)
 
最古の ”confirmed” 419-411 Ma Chlorolichenomycites salopensis Cyanolichenomycites devonicus Ascomycota - Pezizomycotina の系統に属すると考えられる

 

最古の “ambiguous” 486-480 Ma Farghera robusta.
地衣類というより植物(苔類のRicciaような)のようである。

 

次に古い ”confirmed” 133Ma, 次に古い “ambiguous” 168-152 Ma. 
非常に長い期間(約3億年)にわたって化石が見つかっていない。

 

個々の化石についての検討結果の一部

Prototaxites (*注2、*注3

従属栄養生物と考えられる(C13 : C12比の解析より)Prototaxites loganii ”reject” [1].
Prototaxites taiti ”ambiguous” [2].

 

Winfrenatia reticulata

“ambiguous”.   シアノバクテリアのコロニー内で菌糸が成長しているものと解釈される。 
 

“Ediacarans”: 

 “rejected”.     別のセクションで議論されている

 

分子時計による年代の推定

TABLE 23.3を簡略化(真核生物の起源を1600 Maと仮定して分子時計を較正)

Ascomycota-Basidiomycota split                      632 Ma  
Embryophyta (陸上植物) stem                    619
Embryophyta (陸上植物) crown                  545
Tracheophyta (維管束植物) crown              529
Pezizomycotina crown                                     348
Lecanoromycetes stem                                     306
Agaricales stem                                                125
Parmeliaceae crown                                          100

 

子嚢菌と担子菌の分枝は陸上植物の起源よりも(少し)早いが、Pezizomycotina は維管束植物よりも新しい。

“Ediacarans” lichen ではない(*注4)

多様な生体(動物、植物、菌類、バクテリア等)の ”diverse array of partially unrelated organisms” である可能性が最も高い。
 
厚みのある化石 -> 圧縮に対する耐性がある -> キチン質を持つ -> 地衣類である
等の論理は成り立たない
 

“Protolichens” 仮説について

仮説: 陸上植物の発生以前に、藻類との共生, ”association with algae”, の中で進化した真菌類(protolichens)があった。これを祖先としてAscomycotaの多くの系統が生まれた。(*注5)

 

この仮説は多くの証拠と矛盾する
Ascomycota の多様化以前に、すでに陸上植物が存在していた

しかし、現在絶滅している地衣共生菌の系統があった可能性は否定できない

そのほかいろいろな議論あり。うまくまとめられないが、大雑把、かつ大胆にまとめると:

陸上植物発生以前に、現生地衣共生菌の祖先であるような菌類が、現生地衣類のような形質の地衣類を形成していたことはない。

しかし、陸上植物以前、あるいは原生代に、シアノバクテリアあるいは(真核)藻類と菌類(さらに ”fungal like bacteria” もいたかもしれない)が何らかの関係を持って生きていたであろう。これらの関係が「共生」と呼べるものもあったかもしれない。 しかし、このようなものは化石として残りにくいので、確証を得るのは難しい。

このような共同体が土壌を形成し、その後の植物の上陸に貢献したのかもしれない。そのためには、現在の地衣類のように乾燥した環境でも生き延びられる必要がある。(*注6)

 

 

Aspergillus, Penicilliumの祖先は 地衣共生菌ではない

分子系統解析による「Aspergillus Penicillium の祖先が地衣共生菌であった」という論文[3]が注目されたが、この結果は間違いだった。

その後のより正確な解析では、Aspergillus Penicillium の祖先は地衣共生菌ではない。

そのような間違いが起きた原因も調べた。(*注7) 

 

地衣共生の獲得(と喪失) 

Lichenization(地衣共生という生き方の獲得)は進化の過程で、Ascomycota Basidiomycota で、何度も独立に起きた(*注8, *注9)

Gains of lichenization の回数: Ascomycota 16-25回、Basidiomycota 5-6 回.Loss of lichenization (“delichenization”) の回数は書かれていない。

地衣共生菌から地衣生菌への転換が、特に Arthonimycetes Lecanoromycets でしばしば起きている。しかし、地衣生菌は共生藻との生理的な関係を保っており、ここでは本当の ”delichenization” とは見做さない。(*注10)

これまでのところ多くの loss of lichenization Lecanoromycetes綱のOstropales 目で見つかっている。このうちStictidaceae科のほとんどは植物上で腐生または寄生性の生活をしている(*注11)。 

Agyrium属などのOstropomycetidae科など他のいくつかの小さな系統でもdelichenized している。

生物学的または系統発生的に研究されていない他の系統にもいくつかのdelichenizedの候補がある。

 

地衣類の進化(多様化)

分子時計の研究によると、地衣類の系統の進化(多様化)は,LecanoromycetesArthoniomycetes がほぼ同時に出現した石炭紀(360-299 Ma)から始まる地質年代と一致する。

Lecanoromycetes の基部か基部に近い Acarosporomycetidae Candelariomycetidae は重要な岩上生活者を含み、年表では、石炭紀の熱帯雨林が崩壊して大陸の広い範囲に砂漠が広がっていた石炭紀の終わりからペルム紀(299-252Ma)にかけての時期に置かれる。ペルム紀には、Lichinomycetes a Umbilicaromycetidae (Lecanoromycetes に属す)も 誕生している。

三畳紀(252-201 Ma)も同様に乾燥した気候で、地衣類の新系統は現れなかったようだ。

ジュラ紀(201-145Ma)は再び熱帯気候になり、現代の熱帯雨林が出現した。PyrenulalesTrypethelialesGraphidaceae といった熱帯の重要な地衣類が出現・多様化し,いくつかの新しい独立した地衣化も見られた。 Peltigerales もこの時期に出現した。

C-Pg境界後の古第三紀(66-23 Ma)には Lobariaceae, Parmeliaceae, Peltigeraceae, Physciaceae など温帯・熱帯山地林に典型的に見られる葉状・樹枝状の macrolichen が多様化した。

担子菌では状況が全く異なり、地衣共生菌の系統は C-Pg boundary よりもはるかに後に多様化した。

 

「最古の地衣類」に関する結論

現生の地衣共生菌の系統は石炭素紀以前には表れておらず、地衣化していない主要な菌類系統の祖先でもない(Stictidaceae科(など?)を除く)。

化石記録はこの見解を支持する: デボン紀の化石で地衣類らしい(lichen-like)のは Chlorolichenomycites salopensis Cyanolichenomycites devonicus 2つのみで、これらは現生の系統には位置づけられない。

“protolichens” がもしも存在したとすると、それらは子嚢菌門か担子菌門かケカビ門の、初期に分岐した絶滅した系統(stem lineages)に属する可能性が高い。 原核生物の放線菌とシアノバクテリアの間に地衣類のような関係が存在する可能性(これは、原生代初期にまで遡るかもしれない)も考慮に入れる必要がある。

 

注1:化石が“lichen”であるとするための条件

  • Presence of a mycobiont component recognizable as hyphae (which then arguably may include organisms outside the true Fungi).
  • Presence of a photobiont component in agreement with the morphology of undifferentiated, unicellular or filamentous microalgae (including cyanobacteria).
  • A spatially correlated arrangement of both components in a way that suggests stable interaction in the form of an exosymbiosis

*注2:Prototaxites . 樹木のような巨大な菌類として「菌類のふしぎ」(国立科学博物館編 東海大学出版部)p13-14 でも紹介されている

*注3: P. loganii P.taiti の関係についてあまり書かれておらずよくわからない。文献[1]では Prototaxites 属全体を扱っていて種による違いにはほとんど触れられていない。文献[2]P. taiti のみ調ていて P. loganii ついては検討されていないようである。

*注4“The Ediacarans or Vendobionta are a diverse array of macrofossils dating back to the Precambrian Neoproterozoic, 635e541 Ma (Narbonne, 1998a, 2005; Droser et al., 2006; Buatois and Mángano, 2016). The term Ediacaran may refer either to the geological period or to the stratum in the Ediacara Hills in South Australia, where many fossils of this period were detected (MacGabhann, 2014). Vendobionta denotes a taxonomic entity, assuming that macrofossils (“Ediacarans”) from this period belonged to a monophyletic group (Buss and Seilacher, 1994; Seilacher et al., 2003).”

*注5:protolichen Ascomycota であると言っているのか、その祖先だと言っているのかよくわからない。「”association with algae” によって Ascomycota が多様化した」という仮説だと思われるが正確にはわからない。

 *注6:この点については詳細に検討していない(?)らしくあまり記述がない。

*注7:よくわからないが “single contaminant” で結果が大きく変わるとのこと。

*注8:菌類の進化のみ議論していて共生藻の進化ついては触れられていない

*注9:子嚢菌と担子菌では様子がかなり違っているらしい。地衣化した担子菌の系統は限られているらしい。さらに、シアノバクテリアと地衣共生する担子菌は単系統であるという情報がある[4]

*注10:全ての地衣生菌 (lichenicolous fungi) は宿主の共生藻との生理的な関係を持っている(炭素栄養を獲っている)のだろうか?

 *注11:"optional lichens" もこの科にある[5][6](この科だけなのだろうか?)

 

一部、www.DeepL.com/Translator(無料版)での翻訳を参考にした。)

[1] Carbon sources for the Palaeozoic giant fungus Prototaxites inferred from modern analogues, Hobbie EA and Boyce CK., Proc. R. Soc. B 277 (2010).

[2] "Fertile Prototaxites taiti: a basal ascomycete with inoperculate, polysporous asci lacking croziers", Honegger R, et. al., Phil. Trans. R. Soc. B 373 (2017)

[3] "Major fungal lineages are derived from lichen symbiotic ancestors", Lutzoni, F., et. al., Nature 411, 937–940 (2001)

[4] "Sharing and double-dating in the lichen world", Matthew P. Nelsen, Molecular Ecology. 2021;30:1751–1754.

[5] "Saprotrophy and lichenization as options for the same fungal species on different substrata: environmental plasticity and fungal lifestyles in the Stictis–Conotrema complex", Mats Wedin, et. al., New Phytologist (2004) 164: 459–465

[6] "Photobiont association and genetic diversityof the optionally lichenized fungus Schizoxylon albescens", Lucia Muggia, et. al., FEMS Microbiol Ecol 75 (2011) 255–272